【小話】あーむ。

「ぐちゃぐちゃごちゃごちゃ」について書いてみようと思います。「ぐちゃぐちゃごちゃごちゃ」という音あるいは文字の連なりで、みなさんは何を連想なさいますか? 個人的には、言葉とうんちと人間を連想します。

 この「ぐちゃぐちゃごちゃごちゃ」三者は、密接に結びつきからみ合ってまさに、「ぐちゃぐちゃごちゃごちゃ」状態にあるように感じられるのです。

 言葉というと、阿吽(あうん)という言葉が頭に浮かびます。あ、うん。あっ、うーん。ああ、ううん。この阿吽という言葉は、含蓄に富む言葉のようです。中には、阿吽という言葉をテーマに蘊蓄(うんちく)を傾けた文章をものする方もいらっしゃるにちがいありません。

 こじつけや駄洒落や出まかせやでたらめが好きな者としては、いま、わざと、あるいは、ひょっこりと出てきた「あうん」という言葉について、いろいろいい加減なことを書きたくてうずうずしているところです。

 きっと頭の中が「ぐちゃぐちゃごちゃごちゃ」しているからでしょう。その「ぐちゃぐちゃごちゃごちゃ」を、ちょっと出してよろしいでしょうか。すっきりさせてください。けっこう、マジなお話ですので、どうかお許し願います。

「あうん・あーむ・おおん・おーむ・おうむ・aum・om」という、言葉とも音とも言えるような言えないような声の出し方があるそうです。どこかでは「聖なる音」らしいのですが、詳しいことは知りません。

「阿吽・あうん」という言葉を見聞きするたびに、個人的には、あいうえお表を連想します。「あ」から始まって「ん」で終わるという、単純な理由なのですが、その単純さゆえに、かえって深いものを感じてしまうのです。

 ここで、みなさん、「あーん」と口にしてみてください。さあ、恥ずかしがらずに、ごいっしょに、「あーん」。

「あ・a」は、大きく口を開けて息を吐き出す音ですね。「ん・n」は、口をかすかに開いたまま、上の歯の裏から奥にかけて(硬口蓋というそうです)、舌をぴったりとくっつけて、鼻から息を出しながら出す音です。

 でも、個人的には、「m」、つまり、両唇を合わせて閉じて、鼻から息を出す「む・mu」の「u」なしの構えで出す音で読んでいます。そうすると、「あーむ」という感じになります。さきほど触れた、aumとかomとかいう、聖なる音とは関係なく、何となく、このほうがしっくりするので、そう読む癖がついています。

 あいうえお表のうちの、「あ・a」と「ん・m」だけを、よく口にします。じつは、二回に一回は、ただあくびをしているだけなのですけど、マジに「あーむ」と声に出すことがあります。

 伸ばしぎみにゆっくりと発音しながら、何度も繰り返します。すると、「あ・a」と「ん・m」の二つはつながり、連続した音になります。目をつむって声に集中すると、口と鼻という名の穴を通る空気の流れと、鼻の奥の震えだけが感じられてきます。そのうち、眠くなります。

 人間は口を開けて「a」と言ってうまれて、「m」または「n」の口をして息を吐いてなくなる。そんな思いにとらわれます。本当のところは知りません。ひとさまが生まれる場にも(自分のことは忘れました)、死ぬ場にも立ち会った経験がないからです。

 人間一般どころか、自分自身に関しても、どうなのかは知りえません。なにしろ、生まれた時の記憶はありません。これから先、いつかは死ぬのでしょうが、その時に自分がどんな口をして死ぬのかは知るよしもありません。

 あーむ。

 いまのはあくびなのですが、あくびは「生きて死ぬ」という行為のレビュー(復習)であり、リハーサル(予行)だという気がします。ワンちゃんも、にゃんこも、ネズミさんも、クマさんも、あくびをしますね。興味深いです。敬虔な気持ちになります。